寝不足の脳は、酔っ払いと同じ? 睡眠不足が判断力と集中力を奪う理由
こんにちは。ICHORA+代表の加々村です。
薬剤師としての知識と、パーソナルトレーナーとしての経験
そして「良い睡眠こそが明日のパフォーマンスをつくる」という考えをもとに
健康づくり、続けられるトレーニング、そして質の高い睡眠について
“明日の自分を整える”ヒントをお届けします。
さて本日は、
「寝不足の脳は、酔っ払いと同じ? 睡眠不足が判断力と集中力を奪う理由」
についてお話しします。
はじめに
「昨日はあまり寝ていないけれど、仕事には支障がない」
そう思ったことはありませんか?
私も、仕事が立て込むと睡眠時間を削りたくなる気持ちはよくわかります。
しかし、睡眠不足には厄介な特徴があります。
それは、本人が思っている以上に、脳のパフォーマンスが低下している可能性があるということです。
実は、長時間起き続けた人の判断力や反応速度が、アルコールを摂取した人と同程度まで低下することを示した研究があります。
お酒を飲んで仕事をしようとは思わなくても、寝不足のまま重要な判断をしている人は少なくないのではないでしょうか。
今回は、睡眠不足が脳に与える影響と、日常生活で気をつけたいことについて、科学的な研究をもとに考えてみたいと思います。
本論
1.17時間起きていると、飲酒時と同じ状態になる?
1997年、オーストラリアの研究者らが、睡眠不足とアルコール摂取によるパフォーマンス低下を比較した研究を発表しました。
この研究では、長時間起き続けることで、認知・運動課題の成績が次第に低下することが確認されています。
特に注目したいのは、次の結果です。
-
約17〜19時間の連続覚醒で、血中アルコール濃度0.05%程度に相当する課題成績の低下が見られた。
-
一部の課題では、さらに長く起き続けると、血中アルコール濃度0.10%程度に相当する低下が見られた。
例えば、朝6時に起きて夜23時まで活動していれば、それだけで17時間です。
もちろん、17時間起きていたら誰もが酔っ払いと同じ状態になる、という意味ではありません。
これは特定の実験条件における作業成績の比較であり、睡眠不足と飲酒が脳にまったく同じ作用を及ぼすわけでもありません。
ただ、自分では普通に活動できているつもりでも、実際の反応速度や注意力は低下している可能性があるという点は、覚えておく価値があると思います。
2.睡眠不足で判断力が落ちるのはなぜ?
私たちの脳は、睡眠中も休んでいるだけではありません。
日中に得た情報の整理や記憶の定着など、翌日の活動に必要な働きを続けています。
睡眠が不足すると、特に注意したいのが、脳の前頭前野に関係する機能です。
前頭前野は、計画を立てる、衝動を抑える、複数の情報を比較するなど、いわゆる実行機能に深く関わっています。
睡眠不足になると、こうした機能に影響が出ることがあります。
例えば、仕事中にこんな経験はないでしょうか。
「いつもなら気づくミスを見落とした」
「簡単な判断なのに、なかなか決められない」
「些細なことでイライラしてしまった」
これらは必ずしも睡眠不足だけが原因ではありませんが、寝不足によって起こりやすくなる変化です。
特に管理の仕事では、判断の質が結果を左右します。
睡眠時間を削って仕事を1時間増やしたとしても、その結果、判断を誤ったり、翌日の仕事に時間がかかったりすれば、本当に効率が良いとは言えません。
睡眠は単なる休息ではなく、仕事の質を維持するための時間でもあるのです。
3.寝不足に慣れたつもりでも、脳は慣れていない
もう一つ、興味深い研究があります。
2003年に発表された研究では、健康な成人の睡眠時間を制限し、認知機能の変化を調べています。
その結果、1日6時間の睡眠を14日間続けたグループでは、注意力を測定する課題の成績が徐々に悪化しました。
一方で、参加者自身が感じる眠気の増加は、客観的な成績の低下ほど大きくありませんでした。
つまり、眠気を強く感じていないことと、脳が十分に働いていることは別問題なのです。
「自分は6時間寝れば十分」
そう考えている人もいると思います。
実際、必要な睡眠時間には個人差があります。ただし、短い睡眠時間に慣れているという感覚だけでは、十分な睡眠が取れているかどうかは判断できません。
日中の集中力、眠気、休日の睡眠時間なども含めて、自分の状態を確認することが大切です。
4.睡眠不足は筋トレや運動にも影響する
睡眠不足の影響は、デスクワークだけに限りません。
筋トレやスポーツでも、集中力や判断力は重要です。
例えば、スクワットでフォームを維持する、適切な重量を選ぶ、疲労に応じてトレーニングを切り上げる。
こうした行動にも、注意力や判断力が関係しています。
また、睡眠は筋肉の回復や運動後の適応にも関わっています。
睡眠不足が続くと、運動パフォーマンスや疲労回復に悪影響を及ぼす可能性があり、特に反応速度や正確性が求められる運動では注意が必要です。
トレーニングを頑張ることは大切ですが、睡眠時間を削ってまで運動することが、必ずしも身体にとって良い選択とは限りません。
私自身、トレーニングでは「どれだけ追い込むか」と同じくらい、「どれだけ回復できるか」を大切にしています。
5.明日の集中力を守るために、今日からできること
では、睡眠不足によるパフォーマンス低下を防ぐために、何を意識すればよいのでしょうか。
私がおすすめしたいのは、特別な方法よりも、まず基本的な生活習慣を見直すことです。
① 睡眠時間を先に確保する
成人では一般に7〜9時間程度の睡眠が目安とされますが、必要な時間には個人差があります。
日本の厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。
② 起床時間をできるだけ一定にする
毎朝の起床時間を一定にすることは、体内時計のリズムを保つうえで役立ちます。
休日に大幅に寝だめをするよりも、普段から睡眠不足をため込まないことが大切です。
③ 寝る前の環境を見直す
寝室の温度や湿度、光、音などは睡眠の快適さに関係します。
また、寝具やパジャマ、肌に触れる衣服の着心地も、快適に眠るための環境を考えるうえで無視できません。
私たちICHORA+が肌触りや着心地にこだわっているのも、日常の快適さを大切にしたいからです。
衣服だけで睡眠不足が解消されるわけではありませんが、毎晩身につけるものを選ぶことも、睡眠環境を考える一つのきっかけになると思います。
まとめ
睡眠不足の怖さは、眠くなることだけではありません。
自分では問題なく働けていると思っていても、注意力や判断力が低下している可能性があります。
そして、その変化に自分自身では気づきにくいこともあります。
私たちは、忙しいときほど睡眠を後回しにしがちです。
しかし、仕事の成果を上げたい人も、トレーニングの効果を高めたい人も、まずは十分な睡眠を確保することが重要です。
睡眠時間を削ることは、活動できる時間を増やす方法の一つかもしれません。
ただし、その時間をどれだけ有効に使えるかは別の話です。
貴方も今夜、いつもより30分早く寝ることから始めてみませんか?
翌日の集中力や仕事の進み方に、どのような違いがあるか。
ぜひ、ご自身の身体で確かめてみてください。
次回予告
次回は、
「今話題のジャパニーズウォーキングとは? 普通のウォーキングとの違いと健康・ダイエット効果」
についてお話しします。
ウォーキングは健康に良いとわかっていても、毎日続けるのは意外と難しいものです。
そんな中、海外でも注目されているのが、日本の研究から生まれた「ジャパニーズウォーキング」です。
実は、ただ長い時間歩くのではなく、歩く速さを変えることにポイントがあります。
普通のウォーキングと何が違うのか。筋力や持久力、ダイエットにはどのような効果が期待できるのか。
研究結果をもとに、忙しい人でも実践しやすい歩き方をご紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございます。
では、また